挫折を越えて、その先へ。
全日本カート選手権 EV部門 Rd.3・Rd.4 ― 試練の週末が残したもの。
KYOJO CUP Rd.2を終えた翌週。
松井沙麗選手は、休む間もなく全日本カート選手権 EV部門 Rd.3・Rd.4へ挑みました。
前日まで富士スピードウェイでフォーミュラマシンを走らせ、そのままカートへ乗り換えるという過密スケジュール。事前練習を行う時間はなく、わずか5分間の公式練習だけでレースへ臨む厳しい週末となりました。
本記事では、松井沙麗選手本人から届けられたレースレポートをもとに、全日本カート選手権 EV部門 Rd.3・Rd.4を振り返ります。
限られた5分にすべてを懸けて。
フォーミュラからカートへ。
一見似ているようで、その走らせ方は大きく異なります。
前日練習ができなかった松井選手にとって、公式練習はわずか5分間。
その短い時間でマシンの状態を確認し、タイヤのフィーリングを確かめ、本番へ向けた準備を整えなければなりません。
「タイヤのことを考え、練習は5周で終えました。」
限られた時間だからこそ、一周一周に意味がある。
そんな緊張感の中でレースウィークは幕を開けました。
思うようにいかない予選。
迎えたタイムトライアル。
開幕戦に続き、くじ引きで最初のアタック順となる厳しい条件。
さらに、前日まで乗っていたフォーミュラの感覚を完全には切り替えられず、本来の走りを発揮することができませんでした。
結果はベストタイム11位、セカンドベスト10位。
「ベストを尽くせていないことは自分でも分かっており、本当に悔しかったです。」
その悔しさを抱えたまま、Rd.3予選ヒートへ向かいます。

速さよりも、もどかしさ。
10番手スタートとなったRd.3予選ヒート。
スタートでは渋滞する集団の中でライン選択が裏目に出て、一つポジションを落とします。
その後も懸命に前車を追い続けますが、フォーミュラからカートへの感覚を完全に取り戻すことができず、自ら仕掛けられるだけの速さはありませんでした。
それでも最後まで諦めずに走り切り、正式結果は8位。
順位以上に、自分の課題を痛感するレースとなりました。
突然襲ったマシントラブル。
Rd.3決勝は8番グリッドからスタート。
しかし、スタート直後に順位を落とし、追い上げを図ろうとした矢先、マシンに異変が起こります。
アクセルを踏み込んでも、思うように加速しない。
通常の半分ほどしか速度が伸びず、トップ集団に周回遅れとなってしまったことで排除旗が提示され、無念のリタイアとなりました。
原因はアクセルワイヤーの緩みによるトラブル。
「これはメカニックによるトラブルですが、トラブルに気づけなかったのは私のミスです。」
誰かの責任にすることなく、自らも改善点として受け止める姿勢が、松井選手らしさを物語っています。

気持ちを切り替え、再び前へ。
翌日のRd.4。
マシンは完全に修復され、本来のパフォーマンスを取り戻していました。
予選ヒートでは11番手スタートから8位まで順位を回復。
アクセルを踏み込んだ瞬間の加速、ストレートでの伸び。
前日とはまるで別のマシンのようなフィーリングに、ようやく本来のレースができる環境が戻ってきました。
しかし、その一方で「もっと前へ行けた」という悔しさも残ります。
速さは戻った。
だからこそ、あと一歩届かなかった現実が、より強く胸に残りました。
最後まで攻める覚悟。
Rd.4決勝。
スタート直後、2コーナーで混戦に巻き込まれ、後続車に乗り上げられるアクシデントが発生。
マシンは幸い大きなダメージを負わず、レースを続行することができました。
最後の3周では前車との差を一気に詰めます。
オーバーテイクできる距離まで迫りながらも、再び接触してリタイアするリスクが頭をよぎり、最後まで仕掛けることができませんでした。
結果は10位。
「抜けたはずの場面で抜かなかったのは、ドライバーとして失格です。」
その言葉には、自分自身への厳しさが込められていました。
強くなるための試練。
トラブル。
リタイア。
クラッシュ。
そして、自らの判断への後悔。
決して思い描いていた結果ではありませんでした。
それでも松井選手は、この週末を言い訳にはしません。
「トラブルに気づけなかったのも、クラッシュをしたのも、最後に抜かなかったのも全て私の責任です。」
その言葉の先に続くのは、前を向く決意でした。
「今年のレースでは情けない姿しか見せることができていませんので、成長して、かっこよく速い強いドライバーの姿を見せられるように精一杯努力します。」
失敗を隠さず、受け止め、次へつなげる。
それこそが、松井沙麗選手の強さなのかもしれません。
一戦一戦を、大切に。
EV部門も残すところあと2開催、4レース。
限られたチャンスの中で、一戦一戦を大切に積み重ねていくことが、次の成長につながります。
「皆様と私が笑顔になる結果を出せるように頑張ります。」
その言葉を胸に、松井沙麗選手の挑戦は続いていきます。
RAYSはこれからも、その歩みを足元から支え、さらなる飛躍をともに応援してまいります。